個人再生をしても家は残せる?住宅ローン特則の利用条件と徹底解説
個人再生をする時、通常は一部の債権者だけを優先して返済し続けることは認められていません。
しかし、住宅ローン特則を使えば住宅ローンの返済だけを継続出来るので、家を維持した状態で個人再生が出来ます。
今回は、個人再生の住宅ローン特則の利用条件や、注意点について詳しく解説していきます。
住宅ローン特則で家を残す方法
住宅ローン特則とは?
借金が苦しくて債務整理を考える人も多いですが、もし自己破産をすると家や土地は強制的に競売されてしまい、引越しを余儀なくされます。
「どうしてもマイホームだけは残したい、、」という人には、個人再生の住宅ローン特則がオススメです。
住宅ローン特則とは?
- 個人再生によって住宅ローン以外の借金を減額できる制度
住宅ローン特則を利用すると、住宅ローン以外の借金が大幅に減額されます。
住宅ローンは減額されないので今まで通り返済しないといけませんが、他の借金が減る事によって結果的に住宅ローンの支払いが楽になります。
つまり、住宅ローン特則を利用すればマイホームを手放さなくて済むと言う事です。
通常、住宅ローンの返済が出来なくなると、抵当権を持っている金融機関などに不動産を差し押さえられてしまいますが、民事再生法197条では「個人再生をしたときに、抵当権の実行手続きを中止出来る」と明記されています。
抵当権の実行手続の中止命令等
民事再生法197条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、 住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている前条第三号に規定する抵当権の実行手続の中止を命ずることができる。
引用元:民事再生法/法令検索e-GOV
個人再生は通常、一部の債権者だけを優先して返済し続けることは禁止されていますが、住宅ローンのみ特別扱いをしてもらえます。
家を維持した状態で個人再生をしたい人にメリットのある制度です。
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なぜ住宅ローンだけ特別扱いされるのか?
多くの借り入れ先がある中で、なぜ住宅ローンだけ特別に返済が認められるのでしょうか?
それには、以下の理由があります。
住宅ローンが特別な理由
- 基本的な生活を維持する為の必要な支払いだから
- 住宅ローンを返済したほうが、資産価値が上がる場合がある
住宅ローンは、普段の生活を維持するために支払う家賃のような意味合いを持ちます。
個人再生をすると、基本的な生活を維持するための家賃支払いは継続することになりますが、住宅ローンも同じ扱いです。
住宅は経済的な更生に繋がる生活の基盤なので、特別な返済が認められています。
また、住宅ローンをコツコツ返済すれば、当然ながら負債は減っていきます。
例えば、5,000万円の家を売る場合に4,000万円のローンが残っている家と、1,000万円のローンが残っている家とでは、当然後者のほうが資産価値は高いです。
ローンの支払いを認めることで、住宅の売却価値を上げられるというメリットもあります。
連帯保証人への影響
住宅ローンを組む場合、配偶者や親などに連帯保証人を頼んでいる場合があります。
もし自己破産をすると、住宅ローンの残債は返済義務がなくなりますが、その代わりに連帯保証人が支払う事になります。
個人再生で住宅ローン特則を利用すると「連帯保証人に迷惑がかかるのでは?」と、つい不安になるかもしれません。
住宅ローン特則と連帯保証人の関係
- 連帯保証人には影響はない
民事再生法177条では「個人再生をしても連帯保証人には影響を及ぼさない」と明記されているので、特に心配しなくても大丈夫です。
注意点
- 返済が滞ると連帯保証人に影響がでる
返済を継続している限りは連帯保証人に迷惑はかかりませんが、仮に返済が滞ると上記の177条がの規定が適用されなくなります。
連帯保証人に多大な迷惑をかけないためにも、再生計画どおりに返済をしましょう。
住宅ローン特則申請に必要な書類
個人再生で住宅ローン特則を利用するためには、事前に必要書類を準備しておくことが大切です。
住宅ローンの利用の際に必要な書類
- 住宅資金貸付契約の書面のコピー
- 住宅資金貸付契約における弁済の時期及び金額の書面
- 登記事項証明書
住宅ローン特則が認められる条件
本人名義の居住目的の住宅であること
住宅ローン特則は誰でも利用出来る訳ではなく、3つの条件をクリアしていないと申請出来ません。
条件1
- 個人再生の申立人が所有している住宅である事
住宅ローン特則を申請するには、まず本人所有の住宅である事が必須条件です。
もともと親が所有していた家でも、申立ての時点で本人が所有していれば問題ありません。
ただ、資産運用目的での購入や別荘の場合は住宅ローン特則は認められないので、あくまで居住目的の住宅である事が条件です。
住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
住宅には「抵当権」といって、債務者が住宅ローンの支払いが出来なくなった時に備えて家を担保にできる権利が付いています。
抵当権って何?
- 金融機関が土地や建物などの不動産を担保にする権利
住宅ローンが払えなくなった場合、この抵当権が実行されて住宅が売却されてしまいます。
住宅ローン特則を利用する為には、不動産に住宅ローン以外の抵当権がついていない事も重要な条件です。
抵当権の条件
- 自宅に住宅ローンを担保するための抵当権が付いている事
- 住宅ローン以外の抵当権が付いていない事
とくに個人事業主や自営業の場合は、事業用資金の借り入れのために自宅を担保に入れている場合があるので要注意です。
住宅資金の貸付債権であること
住宅ローン特則を利用する場合は、対象となるローンが「住宅資金貸付債権」であることが必要です。
住宅資金貸付債権の条件
- 分割払いの定めのある貸付けであること
- 住宅の建設、購入または改良に必要な資金の貸付けであること
大半の住宅ローンは分割払いで資金の返済をしますが、一括払いの貸付は住宅ローンには該当しないため、住宅ローン特則を受けられません。
また、リフォーム費用のために借りたローンなどは、抵当権は設定されないため住宅ローン特則の対象外です。
ただし、大幅な住宅改良のためのリフォームローンを組んでいて、住宅を抵当権に設定している場合は住宅資金貸付債権となります。
保証会社による代位弁済から6ヶ月以内ならOK
住宅ローンを一定期間滞納すると、保証会社が本人に変わって住宅ローンを一括弁済します。これを代位弁済と言います。
申請のタイミング
- 代位弁済実行から6ヶ月以内なら住宅ローン特則は申請出来る
代位弁済が行われた場合、原則として住宅ローン特則を使うことは出来ません。
ただし、保証会社による代位弁済がおこなわれた場合でも、代位弁済実行から6ヶ月以内なら住宅ローン特則は申請出来ます。
住宅ローン特則を利用出来ない2つのケース
税金を滞納している場合
住宅ローン特則の利用条件をクリアしていても、税金を滞納している場合は住宅ローン特例を使うことは難しいです。
税金を滞納していると、国から住宅や土地を差し押さえられる可能性も出てくるので、早急に返済しないといけません。
返済が厳しい場合
- 分割での返済が出来る事もある
個人再生の申請中は、税金の支払いさえも厳しい状態が考えられます。
もし一括払いが困難な場合は、債権者の同意を得た上で分割して納められるケースもあるので、まずは放置せずに相談するのが1番です。
税金を滞納すると「税金の支払いが出来ない人は長期間再生計画の実行も難しいのでは?」と判断されてしまい、住宅ローン特則が認められないばかりか、個人再生そのものが認可されない可能性もあるので要注意です。
ニ世帯住宅の場合
親子で二世帯住宅に住んでいる場合は要注意です。
二世帯住宅の場合,個人再生を申請した世帯だけでなく,別世帯の親も同じ建物を利用しています。
注意点
- 床面積の2分の1以上が住居用でないといけない
住んでいる家が住居用だとしても、住居全体の床面積2分の1以上が債務者の住居でないといけません。
その為、個人再生を申請した家族と親家族が利用している部分を比較して、別世帯が住宅の床面積2分の1以上を使用している場合、残念ながら住宅資金特別条項の利用出来ないので気を付けましょう。
定期借地権付きローンの場合
定期借地権付きローンは申請出来る?
住宅資金特別条項の対象となるのは、住宅の建設・購入に必要な資金や、住宅の土地や借地権の取得に必要な資金に限られます。
ポイント
- 定期借地権付き住宅でローンを組んでいても住宅ローン特則に申請出来る
定期借地権付き住宅を購入する際には、土地の権利者に保証金や権利金を支払い、ローンは保証金などを含んだ金額分が対象です。
つまり、定期借地権住宅で支払うローンは「住宅取得に必要不可欠なローン」という事になります。
住宅ローン特則では、住宅の購入に必要な資金が対象となるので、保証金を含む定期借地権付き住宅ローンも特則の対象として考えても問題ありません。
住宅ローン特則は4種類ある
従来どおり返済を続ける期限延長型(そのまま型)
住宅ローン特則には4種類の再生計画があり、それぞれ返済期限や支払い方法が違います。
まずは、住宅ローン特則の中でも一般的によく利用されている「期限延長型(そのまま型)」を紹介します。
期限延長型(そのまま型)
- 支払い方法…約定どおりに返済を続ける
- 向いてる人…住宅ローンの返済に滞納がない人
個人再生を申請する前の返済額や返済期間のまま、住宅ローンの約定どおりに返済していく方法です。
期限延長型(そのまま型)なら、債権者の理解も得られやすいため、比較的手続きはスムーズに進みます。ただし、正常返済型を利用するためには、住宅ローンを遅延なく返済していることが最低条件です。
期限の利益回復型
住宅ローンを延滞すると、本来分割払いが認められていたものが一括返済するように求められます。こういった分割返済の権利を失ってしまうことを「期限の利益喪失」と言います。
このような状態になっても「期限の利益回復型」を選択すると、延滞分の元金と遅延損害金を3~5年間で分割払いにする事で、一括請求された住宅ローンを再び分割払いに戻せます。
期限の利益回復型
- 支払い方法…約定通りの返済+滞納分を3~5年で分割払い
- 向いてる人…住宅ローンの返済に滞納がある人
この方法を使う場合、延滞分の元金だけでなく延滞したペナルティーとして遅延損害金を上乗せして、最長5年間で返済しないといけません。
毎月の返済額が大きくなるリスクがある点がデメリットです。
リスケジュール型(期間延長型)
「リスケジュール型(期間延長型)」は、住宅ローンの支払期限を延長し,各回の返済額を減額することが出来るタイプです。
利息+遅延損害金を含めた住宅ローンの全額を支払う事が条件で、毎月の返済が厳しい場合は、この方法を使って最長10年間支払い期限の延長が出来ます。
リスケジュール型(期間延長型)
- 支払い方法…支払期限を延長し,月々の返済額を抑える
- 向いてる人…再生手続きの返済+約定通りの住宅ローンの返済が難しい人
支払い期限を10年間も延長出来るので月々の支払額は抑えられますが、70歳までには完済しなければいけません。
返済を一時ストップしてリスケジュールする
再生手続きの返済に住宅ローンの返済が加わると生活が出来なくなる場合「元本猶予期間併用型」が適用されます。
元本猶予期間併用型は、個人再生の弁済期間中だけ住宅ローンの支払いを一時的にストップして、元金の一部や利息のみ支払っていく方法です。
元本猶予期間併用型
- 支払い方法…一時的に住宅ローンをストップし、元金や利息のみ払う
- 向いてる人…再生手続きの返済をすると住宅ローンの返済出来なくなる人
住宅ローンの元金の支払いを猶予してもらえる期間は、最長5年までです。債権者の理解を得られるならこの方法が最善かもしれません。
まとめ
弁護士に依頼するのが1番
個人再生での住宅ローン特則を利用するためには、かなり複雑な法律知識が必要です。
また、住宅ローンの融資をしている金融機関の理解も得る必要があるので、住宅ローンが残っている人が個人再生をする場合は、自分で手続きをするよりも弁護士に依頼した方が、結局のところ費用も時間も無駄にせずに済みます。
以上、個人再生をしても家は残せる?住宅ローン特則の利用条件と徹底解説でした。
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(参照:個人再生をしても家は残せる?住宅ローン特則の利用条件と徹底解説)